研究室では人の流れや情報の流れを分析する研究をしています.多くの場合これらの計測結果ではあるイベントに何人が参加したといったミクロ的な変化を扱うことになります.本ブログでは統計情報を用いて長期間でのマクロ的な「人」,「情報」,「金」などの流れについて分析・可視化していきたいと思います.
人口の長期推移
今回は初回ということで都道府県毎の人口に焦点をあてて「人口動態」と「世帯数調査」を可視化します.まずは1980年から2019年まで,およそ40年の日本人の人口の推移を可視化します.日本の人口はよく知られているように2010年頃を境にして減少傾向にあります.
まずは三大都市圏の東京都(1位),大阪府(3位),愛知県(4位)の推移を見てみましょう.中でも人口が増え続けているのは東京だけで大阪は2015年から愛知では2019年から減少傾向にあります.東京の一人勝ちです.また,長らく停滞している大阪と増加傾向にある愛知も勢いの違いを感じます.
東京近郊の神奈川県(2位)は2005年に大阪の人口を抜きましたが,近年は減少の兆しが見えています.一方で埼玉県(5位)や千葉県(6位)は増加率は鈍化していますが,今も増加傾向にあります.
大阪近郊で見ると兵庫県(7位),京都府(13位)共に人口は減少傾向にあります.1995年に兵庫の人口が大きく減っているのは阪神・淡路大震災(犠牲者6434人)の影響となります.1988年に京都の人口も減っているのですが,この原因は特定できていません(ご存知の方がいれば下にコメントを頂きたいです).
人口8位と9位は北海道(8位)と福岡県(9位)です.北海道には札幌市が,福岡には福岡市と北九州市という2つの政令指定都市がありますが,この2つの変化の違いは特徴的です.今は北海道の人口が多いですが,急速な勢いで人口が減少していることが見て取れます.この様子だと5年程度で順位が入れ替わりそうな勢いです.
その他の政令指定都市を持つ静岡県(10位),広島県(12位),新潟県(15位),岡山県(20位),熊本県(23位)は,その全ての県で人口は減少しています.
首都圏以外で増加しているのは沖縄県(25位)だけです.比較的健闘しているのは滋賀県(26位)です.以前は沖縄と同様の増加率でしたが,ここ数年は減少傾向にあります.
2011年に発生した東日本大震災の影響も見ておきましょう.福島県(21位)はこの年を境に人数が大きく減少しています.仙台市という政令指定都市を持つ宮城県(14位)も減少していますが,翌年には元に戻っています.茨城県(11位)はほとんど影響はなかったようです.
人数の少ない都道府県も見ておきましょう.最下位の鳥取県(47位),下から二番目の島根県(46位),順に高知県(45位),徳島県(44位),福井県(43位),山梨県(42位)は全て減少傾向です.1985年頃から減少傾向にある島根に対して2000年頃から減少傾向にある山梨など幾つかパターンの違いはありそうです.
世帯数の長期推移
このように首都圏以外の人口は減少しているのですが,世帯数は全ての都道府県で増加しています.都会と田舎関係なく増加しています.
人口が減少しているにも関わらず,世帯数が増加しているのは一人暮らしの人が増えていることを意味します.そこで都道府県別に
人口÷世帯数
を計算してみました.これは一世帯あたりの家族の平均人数を表しています.全ての都道府県を表示してみましたが首都圏を含めて全て減少しています.40年前には4人に近い都道府県もありましたが,最近では全てが3人以下で,2人を割り込んでいる都道府県もあります.
このグラフではどの線がどの都道府県か分からないので,全国の世帯数平均を算出し,各都道府県の世帯平均の上位と下位のベスト3を抽出してみました.人数が多いのは福井県,山形県,富山県,人数が少ないのは北海道,東京都,鹿児島県です.北海道と東京は2人を割り込んでいます.これは1人世帯が増加していることを意味していますが,その理由は田舎と都会ではおそらく異なることでしょう.東日本大震災以降,家族のきずなの大切さが見直され,結婚する人が増えたといわれています.グラフからも東京ではその様子が顕著に表れています.
近年,最初のグラフが示すように,日本の人口は毎年およそ33万人が減っています.これは静岡県(10位)の10分の1の人口が消滅している計算になります.月並みな結論としては人口を増やす施策や研究に期待が高まっていますが,これは簡単なことではありません.時にはこういった数字を意識しながら研究テーマを考えてみるのも大事なことかも知れません.