RA(リサーチアシスタント)の西田(@r_nsd)です.
LBJ2019 (06/12~14@幕張メッセ) にて,人流計測や自律移動型ロボットなどの技術を出展しましたので,他社の出展の様子も含めて報告します
ロケーション・ビジネス・ジャパン(LBJ)とは
位置情報をテーマとしたイベントです.位置情報を取得する技術や,取得した位置情報を活用する技術が主に出展されています.
インターネットテクノロジーの国内最大級のイベントである「Interop Tokyo」や,デジタルサイネージを紹介している「DSJ」,メディア系の「Connected Media」,様々なアプリを紹介している「APPS JAPAN」と同時開催され,全てのイベントで合わせて,500以上の出展があり,3日間で計15万人以上が来場しました.出展のブースはとても豪華です.
産総研の出展内容
産総研 人工知能研究センター 社会知能研究チームでは,
「人や車・ロボットの移動」について研究しています.
LBJで出展した技術のうち,
- センサで人の移動を計測する「人流計測」
- 人の移動を再現・予測する「人流シミュレーション」
- センサで周りの環境を計測しながら移動する「自律移動ロボット」
- それらの情報を統合する「プラットフォーム」
について紹介します.
人流計測
RGB-DカメラやLiDARを用いて人の移動を計測する技術です.実際にブースの内外にカメラとLiDARを設置し,リアルタイムで計測結果を表示するデモを行いました.
人流計測の様子.RGB-Dカメラ(写真右上に設置)で計測した情報を処理し,人の位置を検出(丸で表示)します.
人流シミュレーション
施設内やイベントでの人の移動を再現・予測する技術です.人流シミュレーションにより全体の人の移動が再現できるため,人流計測出来ていない範囲の人流の様子を確認することができます.また状況が変わった時の人の移動を予測することができます.そのため,人流シミュレーションは施設の設計案やイベントでの誘導案を考えるときに役立ちます.
上の図は新国立劇場での避難訓練時の人流のシミュレーションの様子で点一つ一つが歩行者を表しています.赤で表示されているのは混雑下にいる歩行者です.
自律移動ロボット
センサで周りの環境を認識し,障害物にぶつからないように移動することができるロボットです.3次元の地図を構築し,通行可能領域の算出や,自分の位置の推定を行っています.
電動車いすの自動運転に使われている技術です.(産総研とスズキ、つくば市の3者、電動車いすの自動運転実験 )
自律移動ロボットが会場内を自律で回っており,来場者からの注目が集まっていました.
プラットフォーム
そしてこれらの情報は全てプラットフォームを介して情報の送受信が行われています.下の図はその可視化結果です.左の丸い同心円上の中心にロボットがいて緑色の地図を作りながら走行しています.青い小さな丸は環境に設置した LiDAR で抽出した人の位置を表しています.円柱はそこからプラットフォーム上で計算した混雑予測のヒートマップです.
このように環境に設置されたセンサやロボットで計測された地図や人の位置情報はプラットフォーム上に保存されて,各種アプリケーションで利用することができます.
他社の出展内容
他社さんの位置情報の取得,活用,表示の出展および目を引いた出展について紹介します.
位置情報の取得
・屋内の位置情報取得
屋内の位置情報取得には,一般的にビーコンが用いられます.ビーコンはBluetoothを利用した,半径数十メートル範囲を測位できる位置特定技術です.
しかしビーコンの現場導入にはいくつかの問題点があります.例えば,ビーコンは定期的な電池交換が必要です.また屋内の全範囲をカバーしようとするとビーコンの必要数が増えコストが大きくなりますし,メンテナンスも大変になります.
これらの問題を解決するために,「仮想ビーコン」という技術が注目を集めています.
株式会社ネットワンパートナーズは,Mist Systems のMist高精度屋内位置情報ソリューションを紹介されていました.
これはBLE(通信速度は1~2Mbpsと低速だが省電力で動作するBluetoothの通信方式)を周囲8方向に出すデバイスを設置し,クラウド上で仮想のビーコンを設置するシステムです.
位置情報の活用
・災害シミュレーション
北陸先端科学技術大学院大学と名古屋大学が,災害時の被害予測を行うシステムを出展されていました.人々の位置,降水量,河川水位,交通情報から被害量の算出や数時間後の被害予測を行い,安全な避難経路情報を人々へフィードバックするという仕組みです.
・ドローン
今年のLBJはドローンの出展が多かった印象です.
ドローンによる建物の点検や荷物の運搬を応用先として,それに必要な飛行ルートの作成や高精度な位置情報を用いた飛行制御に関する技術が出展されていました.
位置情報の表示
・バスロケーションシステム
昔はバス停に置いてあるのは紙の時刻表でしたが,最近では時刻表もデジタル化され始めています.次に来るバスはどこ行きで,現在は何停前にいるのか,といった情報を表示しています.
その他
・3Dビジュアルディスプレイ
バスロケのデジタルサイネージとは毛色が異なりますが,立体的な映像を表示するサイネージです.
3Dビジュアルディスプレイ「Hypervsn」
・ミストスクリーン
株式会社コーンズテクノロジーがミストでできたスクリーンを出展されていました.触れても濡れずに通り抜けができ,タッチ操作もできる近未来を感じる技術です.
オライリー
まとめ
本記事では,LBJ2019に出展し「人流計測」や「自律移動型ロボット」などの技術の紹介および他社の出展を紹介しました.
位置情報の計測・取得や位置情報の活用,位置情報の表示技術について取り上げ,その他デジタルサイネージ技術を紹介しました.
ミストスクリーンは,RGB-Dカメラのkinectで人の動きや指の動きを計測することで,インタラクティブな表示を行っているそうです.産総研のRGB-Dカメラによる人流計測とミストスクリーンのコラボレーションなどができたら面白そうだと思いました.
今回の出展が他社との共同研究や技術開発のきっかけとなればと思います.